大分県中津市弁護士  お気軽にご相談ください。

トップ  > ●弁護士のつぶやき  > No. 66~自治会(地縁団体)での除名や差別について~|大分県中津市弁護士中山知康

大分県中津市の弁護士法人中山知康法律事務所のホームページへようこそ

日ごろ直面するさまざまな
トラブル、まずはご相談下さい。
 
お電話でご予約
 0979-23-0239                                   
月~金曜日(日祝祭日を除く)         前9時から午後5時まで
お気軽にお電話下さい。

出張相談あります              入院中であるなど、ご高齢や体調により来所が困難な場合は出張相談(要出張費)もいたしております。


※足のお悪い方は一階の相談室をご用意いたしますので、ご予約の時にお申し付けください。 


 
 
 お問い合わせ先

 弁護士法人
 中山知康法律事務所

 〒 871-0053
 大分県中津市古魚町1659番地1

 電話:0979‐23‐0239

 

No. 66~自治会(地縁団体)での除名や差別について~|大分県中津市弁護士中山知康

 


1 暑い暑い夏が過ぎ、ようやく涼しくなってきました。

  ただ、今年の夏は、異常に暑いだけでなく、日本各地で甚大な災害まで発生しています。しかも、その復旧の見通しさえ、まだまだ立っていないところも多く、日本各地で避難生活を強いられている方々もたくさんおられることと思います。

  今回の災害で被災し、お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りしつつ、避難生活を強いられている方々が一日も早く通常の生活を取り戻せることを心よりお祈り申し上げます。

2 話は変わりますが、今日は自治会、といっても、私が住む大分県中津市を含め、いわゆる田舎における地域・集落の地縁団体(通常は、○○○町自治会などという名称が多いと思います。)についてお話ししたいと思います。

  話は変わるとは言ったのですが、実は自治会は、災害対応とも密接な関連があり、非常に重要な問題です。

例えば、東日本大震災以来、各地で取り組まれている地域における避難訓練や災害弱者(高齢者、障碍者、幼児等)の避難補助・援助の訓練などは、自治会を基礎とすることが多いと思います。なぜなら、災害など迅速な対応や共助を必要とする場面において、広域を管轄する市町村などの地方公共団体には、地域に暮らす住民の状況を迅速に把握したり、必要に応じた手助けなどを期待することが難しいからです。

その他にも自治会が担っている公共的役割はたくさんあります。日頃から自治会内に居住する地域住民の情報(世帯数や同居人数等)を市町村等の行政と連携して把握し、そうした情報に基づき市町村等は市報の配布や行政に関する情報を回覧物等によって地域住民に周知したりしています。

要するに、自治会は、市町村等が営む行政機能の一端を担っており、そのため、自治会の代表者である自治会長さんは、市町村等から自治委員と呼ばれる非常勤の特別職公務員として委嘱される例が多いのです。

なお、その他にも自治会は様々な活動を行っているのが通例です。例えば、地域の清掃活動であるとか、地域内の公共的設備(道路や街灯なども含みます。)の維持管理を行う場合もありますし、地域の伝統行事やお祭りなども自治会が担っている例が多いと思います。

そして、こうした自治会の運営費用を賄うために、通常構成員(自治会員)は1世帯当たりいくらと割り当てられたお金(町内会費とか自治会費、区費などとよばれることが多いようです。)を支払います。

3 このように地域の地縁団体の公共的役割はとても大きいのですが、同時にそうした地縁団体は、特に田舎では、半強制加入団体といっていいと思います。なぜなら、地縁という名のとおり、そこに居住しているという事実だけで事実上加入を強制されるのが通例だからです(田舎で暮らしている人が地縁団体・自治会に入らないというのはなかなか大変です。前述の市報や回覧物も回ってこなくなりますし、心理的にも加入は拒めない場合が多いのではないでしょうか。)。

  そういう意味で、地縁団体は、スポーツや趣味のサークル・クラブなどの純然たる任意団体とは異なる性格を持っています。行政機能の一端を担っているという公共的性格と、濃淡はあれど純粋に任意加入とはいえないという性格の両面を持っているからです。

  そのため、地縁団体内部における運営とか構成員の権利義務関係については、純然たる任意団体とは少し異なって考える必要も生じます。

もう少し詳しく言うと、通常の任意団体と個人との権利義務関係とか任意団体内部の運営の在り方などに関しては、基本的には憲法21条で保障された結社の自由の問題であり、団体(より分析的に言うと団体を構成しているメンバー)には外部(裁判所や弁護士会などを含みます。)からその運営について干渉されないという権利(団体の自律権とも呼ばれます。)が保障されていますし、団体の構成員にもその団体に加わる、加わらないという自由(結社への参加・不参加の自由といつでも辞められる自由)が保障されています。ですから、通常の任意団体においては、その運営や内部における権利保障などについて、外部(例えば法律とか裁判所など)からの関与は極力しない(あるいは、できない)というように考えます。
 

しかしながら、地縁団体は前述のように共通の趣味などで結びついた団体ではなく、地縁、つまり居住関係だけによって成立する団体であり、しかも、その居住関係を基礎とする公共的役割も担っているという意味で、純然たる任意団体というより、地方公共団体に近い性格も持っています。

そのため、純然たる任意団体に比べて、団体内部における運営の在り方や構成員の権利保障について異なった配慮が必要となり、場合によっては外部(裁判所など)の関与も必要となる場面があると考えられるのです(この点は、私自身が以前に担当した事件に関して貴重なご意見をいただいた立命館大学教授多田一路先生が「地縁団体を憲法的視点から考えるための予備的整理」(立命館法学2009年4号)に詳しく書かれています。ご興味のある方は検索してみてください。)。

ですから、そうした地縁団体において、差別的取扱いをするとか、ましてや村八分にするということについては基本的には正当化されません(反対に純然たる任意団体であれば何をやってもいいのかという問題もありますが、任意団体の場合には個人の生活に直結する公共的役割等は担っていないはずですし、それゆえ基本的には関わらないとか辞めるという自由があることも前提となっています。)。

4 ところが、こうした地縁団体で村八分とか仲間外れにされる例というのは今も決して少なくはなく、問題になることが実はかなりあります。

 先日知ったのですが、奈良県弁護士会が最近、以下のとおり県内の自治会に対して勧告を発し、公表したようです。

即ち、奈良県内のある自治会では、昔から住む地元神社の氏子を会員とするという慣例に基づいて、長年その自治会の区域内に居住し、現に生活環境維持目的の自治会費に相当する年額1万3500円の協議費の支払いもしてきた住民に対して、行事の案内などをせず、総会や祭りへの参加をさせず、回覧板なども届けないという取扱いがされてきたということであり、この件について、奈良県弁護士会は、「正当な理由なく構成員を限定し、区域に住所を有する個人の加入を拒否することは自治会が有する公共的性格に反し、不合理な差別的取扱いであって、人権侵害に当たる」として、住民の人権救済申立に基づき当該自治会に対して、差別的取扱いの是正を求める旨の勧告を発したということです。

5 実は、大分県内でも同様の問題は頻出しています。

  現に大分県弁護士会は、平成20年に県内のある自治会に対して、正当な理由なく自治会員を除名にし、市報等を配布せず村八分の状態にしていることは人権侵害に当たるとして、当該自治会に対して是正を求める旨の勧告を発しました。

  その後、平成25年にも大分県弁護士会は同じ自治会に対して、特定の住民に対して市報等を配布しないなどの差別的取扱いをすることに正当な理由はなく、人権侵害(憲法14条で保障された平等権を侵害)に当たるとして、当該自治会に対して是正を求める旨の勧告を発しました。

  さらに、昨年、大分県弁護士会は、上記とは別の県内の自治会に対して、特定の住民に対して正当な理由なく加入を拒んだり、市報等を配布しない取扱いをすることは人権侵害に当たるとして、当該自治会に対して是正を求める旨の勧告を発しております。

  このように、私が住む大分県内でも、自治会における不当な差別や村八分など、前近代的ともいえる信じられないような状況が各地で続いているのです。

6 何人も地域社会において公正平等な扱いを受け、平穏に生活することは当然の権利です。

しかも、自治会は、前述のとおり、地域社会での生活に不可欠な公共サービス機能(行政機能)の一端を担っている地縁団体であり、事実上の強制加入団体でもあります。

そうした団体において、正当な理由もなく加入を拒まれたり、除名されたり、あるいは事実上市報等を配布されないなどの差別的取扱いを受けることは、憲法14条で保障された平等権を侵害するものといわざるをえません。

もちろん自治会などの団体の運営において、意見が対立することはあるでしょう。そして伝統的な考え方からすれば、長い物には巻かれろというか、やはり声の大きい人の意見が通りやすく、その他大勢の人にとっては同調圧力が働いて反対意見などはなかなか口には出せないということも、おそらく珍しいことではないでしょう。

そうした中で、個人の意見を主張したことにより主流派から睨まれたり、恨みを買ったりして、他の住民を巻き込んで四面楚歌の状況になるということは決して珍しいことではないと思いますが、上述した自治会の機能や性格からすれば、そうした意見の対立とか、ましてや私怨や個人的感情などで特定の住民を自治会から排除したり、市報を配布しないなどの差別的取扱いは決して許されないと思うのです。

7 現在、日本中の市町村で、UターンやIターン等、移住定住の取組みが盛んに行われています。

  そのため、今後、移住者と旧来の自治会員との間でも、習慣や文化に関する考え方の違いなどから対立が先鋭化する場面も生じることが予想されます。

  もちろん、双方が相互理解に努めること、自分の考えを押し付けないことなど人間関係構築にとって基本的な努力はなされるべきだと思いますが、仮に対立してしまったからといって、多数が少数を排除したり、差別的取扱いをするようなことは現に慎まなければなりません。

  よりよい地域社会を作り、みんなが生活しやすいようにすることは簡単ではありませんが、過疎化し、衰退していく地方の現状や前述の災害対策等を考えたとき、相互に理解し、尊重しあうことをはじめとして、自治会における人間関係を構築し直す知恵が求められているのだと思います。

  そして、その際には、ここでお話した他者の人権を尊重するという鉄則も決して忘れないでほしいのです。

                                           (2018.9.17)