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vol.15 ~「売国奴」、「思考停止」という言葉~|弁護士のつぶやき|大分県中津市弁護士中山知康


  vol.15   「売国奴」、「思考停止」という言葉 




1 最近、安保関連法案をめぐって、多くの市民が、それも、これまでデモなどに参加したことのなかった人たちや普通の学生たちが、どんどんデモに参加しているようです。

そのうねりは、日を追うごとに大きくなり、原発廃止を求めるデモや特定秘密保護法制定反対のデモのときよりも、さらに広がりを見せているのを感じています。

こうした安保法案反対派の広がりや世代を超えた連帯ができつつあるのに対抗して、安保法案賛成派ないし推進派の人たちも、デモ行動を開始したり、ネット上で様々な宣伝活動を展開したりしているようです。

2 私自身は、これまでにもこの「つぶやき」欄で申し上げてきたように、現在審議されている安保関連法案を可決成立させることには大反対の立場です。それは、憲法9条がなし崩しにされるとか、多くの市民に議論も覚悟もないまま戦争に引きずり込まれる可能性が出てくるなどの懸念・疑問点もありますが、私はそれ以上に、立憲主義が壊れるのが怖いからです。

以前も書いたように、私は、立憲主義というものは、国家権力から市民を守るための最後の防波堤だと思っています。

テロや日本を攻撃目標とする国があるとすれば、そうした外敵ももちろん怖いと思いますが、外敵脅威論を楯に、現在の政治権力を握った人たちが憲法の歯止めを無視して、あるいは憲法の歯止めをどんどん弱くしていくことは、その後に到来するかもしれない独裁の危険や、憲法の歯止めなしに権力を行使されることによる人権侵害、少数者の弾圧や切り捨てなどの懸念を払拭できず、とても怖いのです。憲法の歯止めを多少緩めて、政権の裁量を認めても「大丈夫。我々が選ぶ人にそんなに悪い人はいない。」という方もおられるかもしれませんが、結局それは、「人の支配」を認めてしまうことに通じます。しかし、常に善良な君主による統治・支配を期待することには無理がある、そうした歴史的経験に基づいて発明されたのが「法の支配」なのですから、法をも無視できる人の支配を認めてしまうことは時代の流れに逆行し、人権侵害や独裁の危険を強めてしまうものとの懸念を払拭できないのです。

ですから、私は、現在の安保関連法案と、その前提となっている憲法解釈を変更する閣議決定には大反対の立場なのであり、必要があるのならば、正攻法で、憲法を改正するべきなのかどうかについて国民的議論を巻き起こすべきだと思うのです。

3 さて、こうした私の意見はともかく、現在、賛成派、反対派それぞれの立場でデモ活動などが活発になっているのは、とてもいいことだと思っています。

なぜなら、こうした状況は、たくさんの人が、防衛の問題にしても外交の問題にしても、また、国の在り方にしても、自分の問題として考えていることの現れであって、もっともっとたくさん人が関心を持つようになれば、民主主義がより発展・成熟すると思うからです。

ただ、一つ心配なことがあります。こうしたデモ活動やネット上での宣伝の中に、「売国奴」とか「思考停止」という言葉で相手を揶揄したり、非難したりする姿が非常によく見受けられることです。

こうした言葉は、扇情的主観的に相手を攻撃する言葉に過ぎず、相互理解を促すものでは決してありません。むしろ、逆に、相手の考えなどには聞く耳を持たない、問答無用、自分が正しいという姿勢を強硬に示すものであり、同じ考えの仲間内では気持ちいいとか、カッコいいとか感じることもあるかもしれませんが、民主主義の発展や成熟という面から見る限り、これを阻害するものにほかならず、極めて幼稚で稚拙な反応だと思ってしまうのです。

4 民主主義は、自分の意見を押し通すことでは成立しません。

書物からでもメディアからでも構いませんが、いずれにしても人と交わって、人の意見に触れなければ、そもそも自分の意見ができあがりません。そして、一旦できあがった自分の意見でも、さらに人の意見に触れ、良いところは吸収し、逆に自分の意見のいいところは人の意見に取り込んでもらうことで、それぞれの意見は成熟して行くはずです。

  その結果として、当初の自分の意見の誤りに気づくこともあるでしょうし、逆に自分の意見の正しさにも確信が持てることもあるかもしれません。

民主主義は、決して単純な多数決ではなく、こうした意見形成過程、つまり、人の意見に触れ、内省し、吸収し、再構築していく過程、つまり、議論を繰り返すことにこそ、その正当性があるのだと思うのです

5 そうした意味で、私は、「売国奴」とか、「思考停止」などという言葉を相手に向けて攻撃することは、結局、反対の立場の人の意見に触れて自分の意見を再構築する機会を放棄していること、つまり、そうした言葉を使った人自身が思考停止に陥っていることを、白日の下に曝しているだけではないかと思うのです。

  とはいえ、こうした短絡的な言葉で相手をやり込めるということは、わが身に置き換えてみると、そうした行動を取る危険が全くないとは言いきれません。

  吐いた言葉は我が身のレベルを映す鏡として、気を付けなければならないと思う次第です。

(2015.9.1)