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 No. 74~いじめと教師の暴力~|大分県中津市弁護士中山知康

1 今日は「いじめ」と「教師の暴力」のお話をします。

  といっても、「いじめ」本体に関するお話というよりも、「教師の生徒に対する暴力」が現に世の中に存在するにもかかわらず、いじめ防止対策推進法の「防止」、「早期発見」、「生徒の保護」等の施策の対象とされていない点についての私見です。

2 つい先日、私が担当してきた裁判の判決が言い渡され、昨日、確定しました。

  その裁判というのは、大分県内の県立高校の柔道部の練習の際に、顧問の教師が生徒に対して一方的に暴力を振るってケガをさせた事件に関して、大分県に損害賠償を求めていたものです。

3 事件の争点は、大別して、①当該教師が振るった暴力の程度、②当該教師が暴力を振るった原因は生徒自身に原因があったからなどとする過失相殺の主張(大分県の主張)が認められるか、③生徒が負った傷害の程度と当該教師の暴力との因果関係、3点でした。

  大分地裁中津支部が言い渡した判決は、①の点については、頬を平手で1~2回叩いただけとの大分県(及び当該教師)の主張について、平手で1~2回叩いただけでは、両頬が腫れたり、長期間の治療を要するような傷害結果は生じなかったはずであるとして、少なくとも、本件刑事事件で認定された左頬を右平手で2回叩いたという暴行にとどまらない、両頬が赤く腫れあがる受傷を生じさせる強さで、頭部(顔面)に何らかの暴行を加えたものと認定できるとしました。

また、②の点について、大分県は当該教師の暴力は「体罰」であると主張していました。もちろん、体罰自体、許されない違法なものであることは明らかですが、大分県(及び当該教師)は「体罰」という言葉をあえて用いることによって、当該教師の暴力があたかも問題のある生徒に対する指導目的であったかのように主張して、過失相殺という形で暴力を正当化しようとしていました。しかし、大分地裁中津支部が言い渡した判決は、こうした過失相殺の主張は全く認めませんでした。

③の点については、生徒が負った傷害の程度及び当該教師の暴力との因果関係を大分地裁中津支部は一定程度認め、最終的に、生徒に対して150万円余りを賠償するよう大分県に命じました。

4 このように、裁判では、当該教師の言い訳(振るった暴力をいかにも軽いもののように述べてみたり、生徒自身が教師の暴力を誘発したかのような言い訳)は通りませんでした。

それにもかかわらず、平手で1~2回叩いただけとの主張をしてきた当該教諭については、あえて事実に反する主張をすることで自分の責任を免れる、あるいは軽くしようと終始してきたものといわざるを得ず、およそ教育者にあるまじき態度であって、到底許されないものと考えています。

また、当該教師の言い分に追従してきた(訴訟中はもちろん、それ以前の調査段階から)学校や大分県教委の調査結果や判断にも問題があると考えています。

5 さらに言えば、学校や大分県教委が前述のような主張や態度に終始する前提となった調査方法にも問題があったと考えています。

(1) まず、本件に関して学校や大分県教委がどのような調査を行ったか、調査結果がどのようなものであったかなどの情報は、生徒や保護者に対しては全く明らかにされず、説明もなされていませんでした。

そこで、生徒の保護者が情報公開請求をしたのですが、開示された報告書などの資料はほとんど黒塗り(いわゆるのり弁)されたものであって、どのような調査がなされたのか、その調査結果はどのようなものであったかなどは全く分からないままだったのです。

(2) その後、裁判になった後、裁判所からの勧告もあって、ようやく大分県から黒塗り部分の一部が開示されたのですが(もっとも、それでも全てが開示されたわけではありませんでした。)、その結果、本件に関する調査は、当該教師の勤務する高校の2名の教頭だけで担当していたことが明らかになりました。また、大分県教委も現地確認や聞き取りを行っていたようですが、大分県教委の調査も職員のみが担当となっていました。

(3) 要するに、本件について、学校や大分県教委は、専門の調査機関、いわゆる第三者機関など全く設置していなかったのです。

第三者委員会などの専門の調査機関は、いうまでもなく、学校で起きた問題について、当事者である学校や教師に調査を任せたのでは調査方法や調査内容の中立性・公正さを期待できず、真相を解明できないことから、弁護士などの第三者・専門家を交えて調査をすることで、真相を解明するためにあるのですが、本件に関して学校や大分県は、第三者委員会などを設置するどころか、当該教師の上司である教頭2名に調査を任せ、大分県教委もその職員にのみ調査を任せていたのです。

こうした学校や大分県教委の態度からは、本件に関して中立・公正な調査をしようとの姿勢は全く窺えませんでした。そもそも、学校や大分県教委の行った調査では、暴力を振るわれた被害者である生徒やその保護者に対しては詳細な聞取りさえ実施されておらず、軽視されていたことも明らかでした。

(4) ところで、「いじめ」については、いじめの防止、早期発見、いじめに遭った生徒の保護等のために、いじめ防止対策推進法が制定され、また、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(以下では、「ガイドライン」といいます。)も文科省から発出されて、各自治体や各学校に通達されています。

「いじめの重大事態」とは、いじめに起因して心身に重大な被害を受けている疑いがある場合や、いじめに起因して相当期間(30日程度)学校を欠席している疑いがある場合のことを指しますが、ガイドラインでは、いじめの重大事態について、被害生徒を保護し、また、再発を防止するために、第三者(例えば弁護士など)を交えた中立・公正な調査機関を設置して調査にあたることなど、調査の中立性や公正さを確保するための方策が定められています。また、調査結果を適切に被害生徒に開示することも定められています。

ただ、「いじめ」は生徒の生徒に対する行為と定義されているため、教師の生徒に対する暴力は、直接にはいじめ防止対策推進法やガイドラインの対象とされていません。

(5) しかし、教諭の生徒に対する暴力によって、生徒が心身に重大な被害を受けている疑いがあったり、長期間欠席している疑いがある場合にも、いじめの重大事態同様(あるいはそれ以上に)、調査の中立性や公正さを確保し、また、生徒を保護する必要があることも明らかだと思います。

そもそも、生徒間の問題については、学校が直接加害者であるわけではないにも関わらず、中立・公正な調査を確保するため第三者委員会の設置など、第三者を交えた調査機関の設置が定められているのです。

これに対して、教師の生徒に対する暴力は、学校や教育委員会からすれば身内の犯罪や不法行為の問題です。教師の犯罪や不法行為を調査するのが身内である教頭や教育委員会の職員だけとするなら、身内をかばうために、調査の中立性や公正さが歪められかねないことは、おそらく誰の目にも明らかだと思います。そして、その結果として、教師の暴力によって傷つけられた生徒が保護されないという事態だって、十分に想定できるはずです。

だとするなら、いじめの問題同様、あるいはそれ以上に、教師の生徒に対する暴力を調査する場合には、調査の中立性や公正さの確保のために第三者委員会あるいは第三者を交えた調査機関を設置して調査を尽くすべきだと思います。

(6) 前述のように、いじめ防止対策推進法が「いじめ」を生徒間の問題としているのは、生徒間での「いじめ」が深刻な事態を引き起こし、社会問題化していることが背景にあることは明らかですが、他方で、教師の生徒に対する暴力やいじめをその対象としていないのは、おそらく、教師が生徒に対して暴力を振るうことなどありえない、あったとしても極少数にとどまるとの認識があるのではないでしょうか。

   しかしながら、本件を見てもわかるとおり、教師が、その感情にまかせて生徒に暴力を振るったり、いじめたりすることは現にあるのです。そして、その結果として、生徒が心身に深い傷を負うことだってあるのです。

   このことは、生徒間のいじめの場合と何ら変わりありません。

(7) それゆえ、本件について、学校や大分県教委が取った調査手法や姿勢には大きな疑問を禁じ得ません。

   結局、身内をかばうために、真相を隠蔽しようとしたのではないかという疑問を払拭することはできないはずですし、教育機関にとって大きなマイナスでしかないと思うのです。

(8) 今後は、教師の生徒に対する暴力についても、重大な事態、それこそ由々しき事態として、調査を中立・公正にし、一刻も早く生徒を保護できるようにする努力が学校・教育委員会などには強く求められると思います。

(2020.7.22)