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No. 69~コロナ禍の中の小中高校生について~|大分県中津市弁護士中山知康

 

1.先日は、「コロナ禍の中の大学生について」というタイトルでブログを書きましたが、今日は小中高校生について、最近思っていることを書こうと思います。

2.最近になってようやく、新型コロナウィルス感染症の新規感染者(というよりも新規に陽性と判明した方)の数が減少しつつあり、業種によっては事業活動を再開する動きも見られ始めています。

  同時に、小中高校も、特定警戒地域を除いて、長い休校措置を解き、新年度の授業がようやく始められそうな状況になりつつあります。

  この間、多くの小中高校生らは、既に2カ月以上にもなる休校措置により、自宅待機を余儀なくされ、公園などで遊ぼうにも、感染爆発を懸念する方などから叱られたり、学校や警察などに通報されることを心配して外出もままならない状況の中で過ごしてきていました。

  当然ながら、友達と触れ合うという機会はほとんど持てなかったと思いますし(持てるとしても、SNS等を通じた間接的な交流だけになっていたのではないかと思います)、勉強についても3学期の途中から進まないままになっていたのではないでしょうか。

3.こうした中で、ようやく学校再開の動きが見え始めたのは、子どもたちにとって本当に良かったと思うのですが、他方で、突然議論され始めた9月入学制を今年の9月から導入するという案には、戸惑っている子どもたちもたくさんいることと思います。

  ところで、「9月入学制」は、もともとは随分前から導入の是非が議論されていたものです。

  というのは、諸外国では秋に入学し、新学期が始まるという例が多いことから、そうした諸外国の例にあわせて、日本の入学・新学期開始時期も変更しようとの議論が以前からかなりあり、中でも東京大学は、平成23年ころから9月入学制に完全移行する方針を示したりもしていました。

  こうした秋入学制への移行を推進する議論の背景には、諸外国からの留学生の受入れや日本の大学から諸外国の大学に留学するに際してタイムラグが生じること、それによって、留学生の交換が円滑に進まず、グローバリゼーションに乗り遅れているとの危機感があったことは既に広く知られていることと思います。

  こうした問題意識を背景に、留学生をたくさん受け入れたり、送り出したりしている大学や、外国人を積極的に採用しようとする企業・経済団体などが主導して、積極的に議論を展開していました。

4.そうした状況でありながら、9月入学制の議論は長らく結実せず、どちらかというと棚ざらしにされてきた背景には、日本の(会計)年度制が深く関係しています。

  即ち、日本では4月から新年度が始まり、3月が年度末というのが定着しており、多くの企業の会計年度もこれに合わせています。

  当然ながら、国も地方自治体も、4月から新年度予算を執行して様々な事業を展開しますし(各学校の予算も4月から翌年3月までで計上されています)、各単位年度は独立しており、予算は当該年度に使い切るという慣行があることも公知の事実です。

  こうした慣行の弊害(ここでは触れませんが)も叫ばれて久しいところですが、抜本的な改善と改革はなされないまま現在に至っています。

  いずれにしても、現在の年度制とその下で実施されている国や地方自治体の施策を前提とすると、9月入学制は5カ月間のズレが生じるため、単純には9月入学制を採用できないということで今日に至っているわけです。

5.そうした中で議論され始めた今回の9月入学制導入案は、①コロナ禍で子どもたちの学習が遅れていること、②遅れ方には地域差その他の事情による格差が生じつつあること、③そうした格差は入学試験等で不公平を生ずる恐れがあること、などを理由として、今年の9月からの導入を期するというものです。

  当然ながら、今年の9月から9月入学制を導入しようとすれば、会計年度とのズレの調整や関係法律の改正や政令・規則・条例等の改廃が必要となりますし(膨大な数に上ると思います)、一挙に子どもの数が増大する新小学校1年生(平成25年4月2日生~平成26年9月1日生の子ども)の受入れ体制の整備(教室の確保や教職員の確保は当然のこととして、様々な手当てが必要になると思います)等も考えると、膨大な作業が必要となります。

それゆえ、中央省庁の職員だけでなく、全国の各自治体の職員をいわば総動員してあたらなければ、到底間に合わないと思います。

6.とはいえ、やろうと思えば決して不可能なことではないでしょう。

  働き方改革が叫ばれている中でこういう言い方をするのはよくないかもしれませんが、死ぬ気になって事にあたれば、上述したような作業はどうにかこなせるのではないかと思います。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」という上杉鷹山の名言もあるくらいです。(とはいえ、担当する人たちにとっては、地獄そのものということになりかねませんし、過労やストレスのケアが不可欠です)

  しかし、それを前提としても、私は、9月入学制を今年の9月から導入するという案には反対です。

7.なぜ私が今年の9月から9月入学制を導入することに反対なのかというと、どんな制度でも、移行したり、新しく始める場合には準備期間が必要であり、その間に関係する人たちに周知と理解を図り、混乱をなるべく回避するための施策も周到に用意してから望むべきは当然だからです。

  仮に可能だとしても、今年の9月から9月入学制を採用するというのはあまりに乱暴であり、その後の混乱の解決策等の検討は後回しにした無責任な議論でしかないと思うのです。少なくとも、現在、小中高校に通っている子どもたちの意見や感覚等に寄り添ったものとは言えないのではないかと思います。さらに言えば、現役の小中高校生だけでなく、浪人生のことはもはや考慮対象から除外されている、切り捨てられているとしか思えません。

8.そもそも諸外国がこうだから、という立論は、説得力を持ちません。

  なるほど、留学生の交換を円滑に行うためには、確かに入学時期などをそろえた方がやりやすいということは言えるでしょう。

  しかし、諸外国と異なること、しかも、そのことで国連などの国際機関から批判され続けていることを、日本は平気で聞き流し、むしろ、日本には日本の特有の事情があるとか、日本の国民感情に合わないなどといって耳を貸そうともしていない事例がたくさんあります。

死刑制度を巡る議論しかり、男女平等と家制度に関わる問題しかり、選挙活動の自由等の政治的表現の自由を巡る問題しかり(戸別訪問禁止とか法定文書配布の禁止など)、人質司法と呼ばれる刑事手続きの問題しかり、枚挙にいとまがありません。

  しかも、これらの列挙した問題、日本が諸外国に倣おうとせず、あくまで独自路線を突き進もうとしている諸問題は、留学生の交換の円滑化等の問題よりももっと重大な、基本的人権、それも人間の生存とアイデンティティなどに直結する極めて重要な精神的自由に関わる問題であるにもかかわらず、これまで日本政府は日本の国民感情に合わないなどという理屈にもならない理由で国際的な潮流を無視しようとし続けているのです。

  このこと一事をもってしても、諸外国が9月入学だから日本もそれに合わせるなどという理由付けは全く説得力を持たないと思います。

9.とはいえ、私は、これから十分に議論し、検討し、混乱をなるべく回避するための用意をした上で、将来的に9月入学制を導入すること自体については、反対ではありません。

  留学したいと思う人たちがなるべくタイムラグを生じることなく、留学できるように制度を整えることも社会の責務だと思うからです。(留学までのタイムラグは、その間の生活費もかかりますので、金銭的ゆとりのない人は留学自体を断念せざるを得ないケールもありえます)

  しかし、その前に、子どもたちの学習が遅れていること、格差が生じていて不公平だと皆がわかっているのなら、なぜオンライン授業の導入などが進まないのでしょうか。

  本当に子どもたちのことを考えているのなら、すぐにでもタブレット端末を貸し出してでも(現在は多くの家庭にパソコンやスマホがあるので、必ずしも全ての子どもを対象とせず、ひとまず貸与を希望する家庭に限っても構わないと思います)、オンライン授業などを始めればいいのではないでしょうか。

  私は、現在の議論は、子どものためといいながら、実際には子どものことを真剣に考えていないのではないかと思えてならないのです。

10.いずれにしても、9月入学制の導入については、今年の9月から施行などという結論ありきの議論ではなく、ぜひ腰を据えて、じっくりと議論していただきたいと思っています。

(2020.5.8)