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No. 63~参院合区と憲法の関係について~|大分県中津市弁護士中山知康

1 つい最近、今年3月の自民党大会で決議された憲法改正4項目について、講演会でお話する機会がありました。

  憲法改正4項目とは、条文の順番に言うと、憲法9条関係(9条の2を新設して自衛隊を明記)、憲法26条関係(高等教育の無償化)、憲法47条関係(参院合区の解消)、そして緊急事態条項(憲法73条の2の新設)の4つのことですが、今日はこのうち、参院合区問題について、先日の講演のレジュメに基づいてお話しようと思います。

2 自民党の憲法改正案

第47条 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、 人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。

2 前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

3 公職選挙法改正により一応の解決

参議院の合区解消問題については、公職選挙法改正により、今国会で一応の解決を見る予定となっています。

それは、参議院の定数を6増し、拘束名簿式比例代表制を採用することで、平成28年の参議院選挙で合区とされた県(2県で1名の候補者を選出する地域)についても各県から1名の候補者を選出できるようにして、はじき出された候補者を救済するというものです。

当然ながら、このような解決が、党利党略によるもので、小手先のものであることは明白ですし、そうした批判にもさらされています。

4 私見

しかし、ここでより根本的な問題として考えるべきは、一人一票の価値平等の要請(憲法14条)及び国会議員は全国民の代表である(憲法43条)という国民主権原理から来る要請に対して、地域の代表者を最低一人は国会に送りたいという地域の感覚ないし要請をどう調整するかということです。

(1)まず、国会議員が衆参ともに全国民の代表とされている理由は、国民主権原理に由来します(特定の選挙区で選出されたとしても、当該地域の代表ではなく、全国民の代表者として自由に議論し、国政を担当するということです。)。

この要請は、ある意味、公務員が全体の奉仕者とされていること(憲法15条)ともパラレルの関係にあると思います。

要するに、特定の人や特定の利益集団等に対して奉仕するものではない、そうあってはならないということを意味しています(昨今の森友、加計問題の根本的な疑念の一つは、この点が揺らいでいるのではないかということにあります。)。

そして、参議院議員も衆議院議員同様、全国民の代表であり、また、一人一票の価値は平等でなければならないという原則からすれば、参議院についても、人口比例に応じて議員を選出しなければならないという結論が導かれます。

その結果、場合によっては選挙区割りについて各県一人ではなく、二県で一人とか、より広い単位で複数の議員を選出するということも当然の要請となってきます(それが、一人一票の価値平等を求める最高裁判決に従って、平成28年に導入された参議院の合区です。)。

(2)他方で、各県から少なくとも一人は議員を輩出して、当該県の意見を反映すべきだとの考えも根強いものがあります。

これは地域代表と評されることもありますが、本来、地域代表とは全国民の代表の選出方法のことであって、特定地域から選出されたからといって当該地域を代表するものではなく、あくまで全国民の代表として国会を構成しますので、地域代表イコール各県から1名を選出するということが帰結されるわけではありません。

むしろ、全国民の代表であるならば、やはりその選出については、一人一票の価値は平等であるべきということが導かれます。

ですから、地域代表という考え方では、一人一票の原則は崩せません(つまり、合区の問題は解消しません。)。

(3)ところで、国会議員を全国民の代表とする伝統的な国民主権の考え方に対して、それは擬制、つまり、フィクションに過ぎないとして、より現実の国民の意思や利害を調整する制度として職能代表という考え方もあります。

これは、要するに職業団体ごとに候補者を選出するという選挙制度のことですが、この職能代表という考え方は日本国憲法では採用していません(この点は、前述のとおり、全国民の代表という考え方に表れています。)。

しかし、今問題となっている一人一票の価値平等の原則を緩めて、人口比例によらずに必ず一県一人の議員を選出するとなれば、国会議員の全国民の代表者としての性格は揺らぎ、特定の団体ないし地域の代表に近づいていくことになってきます。

(4)このように、仮に合区を解消して、必ず一県一人の議員を輩出するという考え方を採用しようとすれば、全国民の代表者という性格が揺らぎ、場合によっては憲法43条の改正も必要になると思われます。

要するに、国会議員は全国民の代表であることを前提として、その選出については一人一票の価値は平等であるべきと考えるのか、それとも、長年形成された都道府県を基礎として、地域ごとに一人の代表を選出したいと考えるのか、その選択が求められることになってくるのです。

(5)もっとも、今回の自民党の憲法改正案は、「全国民の代表」であるという前提は変えていません。

ただ、地域の代表として各県一人の参議院議員を選出する方向性を志向すれば、おのずと全国民の代表者という性格は揺らぎます。

もちろん、今後、特定の地域や特定の団体の代表として選出された議員と全国民の代表である議員(比例代表制等で選出された議員)とが混在する制度というものも考えられなくはありませんが、議員の存立ないし信任基盤が異なるという意味では複雑になってくると思います(地域を基盤にした議員については全国民の代表ではないので、地方自治体同様にリコール制というものも考えられるということにもなってきます。)。

(6)なお、アメリカ合衆国の上院は、各州2人の代表で構成されており、人口比例ではありません。

  ただこれは、理念や原理に基づいて形成されたというよりも、強い自治権を持つ州によって構成される合衆国という政治形態において、各州の利害を調整するために編み出された妥協的産物です。つまり、各州が独立し、かつ、対等であることを前提としつつ、人口の多い州の意見ばかりが尊重されることのないようにということで、編み出された政治形態であって、若干特殊性があります。

 従って、仮に日本でも各県同数の議員を輩出して、各県の利害を調整するという考え方を取るのであれば、前提として、連邦制や合衆国制のように、各県の独立性を前提として、自治権はより強固にしなければならないのではないかという問題も出てくるのではないかと思われます。

(7)いずれにしても、参院合区の問題は、今般の公職選挙法改正のような小手先の対応では意味はありませんし、何よりも議員相互の互助(つまり、失職しないようにお互いに配慮したもの)ではないかという不信感が拭えません。

   より本質的な議論、つまり、国民主権の意義や一人一票の価値平等の要請をどう考えるのか、他方で、各地域ごとに代表者を選出したいとの要請にどうこたえるのかという難問に、真摯に向き合う必要があると思うのです。          (2018.7.1)