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No. 40 ~離党と法の支配~|大分県中津市弁護士中山知康

1 民進党の若手女性議員の不倫疑惑とこれによる離党問題が世間を賑わせています。

( 不倫疑惑の真偽もその内容もまだ明らかではありませんが、今日は、件(くだん)の議員さんが離党を表明した際の記者会見で発した言葉について、思ったことを書きたいと思います。とはいっても、特定個人のスキャンダルには興味がありませんので、別の角度からです。

2 先日の会見では、冒頭、そして終わりの場面で、国民、党関係者らに対して謝罪の言葉を述べたうえで、党勢回復に水を差したという趣旨のお詫び発言がありました。

しかし、私は、この発言にははっきり言って不満があります。それは、その議員さんが野党議員であり、しかも、法律家出身の方なので、もっと踏み込んだ反省の弁があって然るべきだと思ったからです。

  国民とか党関係者に対するお詫びというのは、最近続発している不祥事発覚のたびに、様々な議員さんが同趣旨のことを述べています。現在の政治情勢を踏まえた時、与党議員さんの不祥事であれば、もしかしたら、これで足りるのかもしれません。もちろん皮肉ですし、そんな対応でも、しばらくすれば有権者が忘れてくれるなどと考えているのだとすれば、あまりに馬鹿にした話だと思います。次回選挙では、当該議員の選挙区の有権者は慎重にその言動を吟味すべきだと思います。

( しかし、今回の議員さんは野党に属しており、今まさに、一強体制を打破して、健全な民主主義の回復と発展に寄与・邁進(まいしん)すべき立場にあったことは明らかです。そうだとすると、件の議員さんが起こした問題は、同じ不祥事であっても、与党議員さんが起こしたものとはその責任の重さにおいて、かなり違うと思うのです。

仮にこの問題で、与党に対抗できる野党、すなわち、与党の政策や理念に異を唱え、数を持って進展していく「流れ」を一旦停止させて議論を重ねるだけの勢力が減退、ひいては消失していくとすれば、日本の民主主義は危機に瀕してしまいます。

3 日本の現状は、まさに、実質的に一党ないしこれに準じる勢力だけによって国政や将来像が決定され、積み重ねられているといっても過言ではないと思っていますし、だからこそ、健全な対抗勢力の存在と発展、体力の蓄積が不可欠だと思うのです。

 それにもかかわらず、という時期に露呈したのが、前述した議員さんの不祥事なのです。

 ですから、今回の問題は、単に党勢回復に水を差したというレベルの問題ではないと思いますし、だからこそ、前述のような発言では不満なのです。

4 率直に言うと、前述の議員さんの不祥事は、民進党の党勢回復に水を差したというにとどまらず、日本の民主主義の回復、維持、発展のすべてに悪影響を与えた、つまり、日本の民主政治に水を差したというべきだと思っているのです。

  さらに言うと、件の議員さんは、私と同じ法律家です。そして、法律家の使命は、言うまでもなく社会正義の実現と法の支配の実現・貫徹です。今回の件は、法律家出身の議員さんが、法の支配の実現を阻害したような気がして、だからこそ、前述の程度の発言では納得がいかないのです。

5 ところで、社会正義の実現という言葉は比較的知られた用語だと思いますし、説明などしなくても多くの方に共感していただけるものだと思いますが、法の支配という言葉については少しだけ説明が必要かもしれません。

  「法の支配」の対義語は「人の支配」です。もっとわかりやすく言うと、特定の人や少数の人たちが実権を握り、自分たちのいいように国政を操り、自分たちや自分たちに近い人たちがその権力の恩恵にあずかる政治体制が「人の支配」ということになります。これに対して、「法の支配」は、そうした特定の人たち、あるいは少数の人たちによる専断的な権力を排除して、すべての権力の源も、行使方法も、法によって規定され、制限されるという考え方です。なお、ここでいう法は、必ずしも現実に存在する法(実定法)を差すわけではありませんが、現在の日本の法制度に即して簡単に言うと、すべての権力は日本国憲法によって規制され、社会は憲法に基づき統治されるという意味になります。その意味で、法の支配という考え方は、日本国憲法が採用している、すべての権力は憲法によって制限されるという「立憲主義」の考え方と近い意味を持っていることになります。

 このような意味での法の支配の実現に寄与・貢献することが、法律家の使命であり、このことを否定する人はあまり多くはないと思います。

6 ところで、現在の日本の政治情勢で問題となっているのは、特定の学校法人に対して最高権力者やそれに近い人たちが何らかの便宜を図ったのではないかという問題です。要するに、権力を持った人たちが自分たちに都合のいいように権力を行使しているのではないか、権力に近い人たちだけがその恩恵に浴しているのではないかという疑念です。上述したところに即して言うと、今の日本では「法の支配」が揺らいでいるのではないかという疑念が渦巻いているのです。

  この疑念が真実であるかどうかはまだわかりません。しかし、現代の民主主義社会にあって、また、法の支配の原理によって行われるべき政治の世界にあって、このような疑念を生じさせる事情が現に存在すること自体が問題なのであり、野党議員には、特に法律家出身の方には、そうした観点から法の支配が揺らいでいるのではないかをチェックし、法の支配を現実の日本の社会で実現すべき責務があると思うのです。

7 今回の議員さんは、まさに法律家出身の野党議員です。

その方の使命は、単に党勢の回復に貢献するなどという小さいものではなく、健全な民主主義の発展に寄与すること、そしてさらに、法の支配の実現を目指すことです。

その方が、この時期に自らの不祥事により離党をしてけじめをつけるというのであれば、そこでの発言内容は、単に党に迷惑をかけたなどというものではなく、自らの行為が民主主義の発展に水を差し、また、法の支配の実現をも阻害しかねないものであることを自覚したものでなければならないと思うのです。

私の考えは、野党議員に対してだけ、しかも、法律家出身者に対してだけ、やたらと重い責務を課すもののように思われるかもしれませんが、現在の政治情勢を考えた時、それらの人にはやはりそれぐらい重い責任があると思って行動していただきたいのです。                                         (2017.9.14)