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 No. 79~大分・村八分事件の判決を受けて~|大分県中津市弁護士中山知康

1 昨日、大分地裁中津支部で、約3年間闘ってきた、いわゆる「村八分」事件の判決言渡しがありました。

私の依頼者である原告本人からすれば、既に8年超もの長期間にわたって、地域ぐるみ、つまり、集落の全員から、住民としては扱わない、そこに住んでいてもいないものとして扱うという過酷な差別やいじめを受け続けてきたことになります。

2 そうした中で昨日下された判決は、原告に対する差別やいじめが「村八分」であり、許されないことを明確に断罪してくれました。原告に対する「共同断交」の決議も、これに基づき集落の代表者である区長らが実際に行った差別やいじめも、全て違法であると認定してくれ、その上で、慰謝料請求事件としては比較的高額と思われる損害賠償の支払いを命じてくれたのです。

もちろん、この判決によってすべてが解決するわけではなく、これを機に、被告となった歴代区長らだけでなく、集落全体に考え方を改めてもらう必要がありますし、関係の再構築が最も重要な課題です。

3 本件は、村八分という言葉が独り歩きして、問題の本質を理解してもらいにくいようですが、村八分というのは地域での集団でのいじめにほかなりません。

つまり、集落の住民全員が率先して差別やいじめをしているというよりも、少数の影響力のある住民が主導し、他の住民は自分に火の粉が降りかかるのを恐れて異を唱えられない、結果として付和雷同して、皆で一人をいじめ、差別するという構造なのです。

つまり、子どものいじめ問題と何ら変わりません。

4 こうした本質に鑑みれば、村八分を主導した少数の方々に判決を真摯に受け止めてもらうことはもとより、付和雷同した他の住民の方々にも、自分たちがしたことで他者を傷つけ、追い詰め、計り知れないダメージを与えてきたことを直視してほしいと思います。

  以下は、昨日、判決を受けてマスコミ宛てに発した声明です。

  よろしければお読みください。

大分地裁中津支部令和3年5月25日判決を受けて

1 本日、大分地方裁判所中津支部にて、既に8年以上にも及ぶ長期間にわたって原告が居住する集落(自治会)で「村八分」にされ、様々な差別や嫌がらせを受け続けてきたことについて、判決が下されました。

  判決の内容は、差別を行ってきた歴代の自治会の長に対してはその責任を明確に断罪し、同種事件からすれば高額の慰謝料の支払いを命じたものですので、大いに評価できるものと考えています。

  他方で、歴代区長に対して市の広報誌の配布その他の行政事務を委嘱し、「自治委員」という公的称号まで与えていた被告自治体の責任を、国家賠償法の解釈や使用者責任の解釈により否定した点については、非常に残念に思っています。

  今後の対応については、検討したうえで控訴するか否かを決めたいと考えています。

2 敷衍すると、本件判決では、原告が集落で受けてきた仕打ちが、「村八分」にあたることを明確に断じています。

  そして、その具体的な内容として、原告が集落で、そして、被告ら歴代区長から受けてきた様々な差別や嫌がらせを、本件判決はかなり具体的に認定しています。

  その上で、本件判決は、こうした原告に対する村八分の扱いは、原告が集落の住民として平穏に生活する人格権ないし人格的利益を侵害するものであることや原告の被った精神的苦痛が相当なものになることは想像に難くないなどとして、前述のとおり、同種の事件に比較すれば高額と言える慰謝料の支払いを被告らに命じています。

  それゆえ、本件判決は、小さな集落で実際に起こった人権侵害を注意深く読み取り、原告が長年被ってきた甚大な精神的被害を救済すべく、慎重に考えてくれたものと思います。

  原告本人としても、本件判決により自身が一定程度救済されたことにはもちろん感謝しており、他方で、全国で同様の思いをしている人たちに対して何らかの示唆ないし救済になればいいと感じています。また、村八分をしている人たちには、これを機に、地域におけるいじめや差別をやめるように考え直してほしいと感じています。

3 最後に、被告自治体の責任が認められなかった点については、これから検討をいたしますが、現時点で申し上げられるのは、国家賠償法の解釈を巡って、なお疑問があるという点です。

被告自治体が歴代区長(自治委員)に様々な行政事務を委嘱し、いわば行政の末端として利用していたこと(本件判決も、自治委員が担ってきた事務の多くが、本来被告自治体が行うべきものであることを認定しています。)、また、そうした行政事務を担わせるにあたって「自治委員」という公的称号まで与えて権威付けしていたことは明らかだからであり、本件は、その行政作用を遂行する過程で、意図的な差別が行われ、原告が村八分にされた事件だからです。

確かに、自治委員が担ってきた行政事務は、市の広報誌の配布や現実に居住している住民の数の報告など、必ずしも権力的なものとは言えない、それ自体としては事実行為に過ぎないかもしれませんが、市からの伝達事項をある人には届け、ある人には届けないという差別的運用がなされる恐れがある作用であり、現に本件ではそれが現実化しています。

それゆえ、公権力の行使にはあたらないとの判断についてはやはり疑問があり、この点については、控訴するか否か慎重に検討したいと考えています。


(2021.5.26)