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No.19~妊娠・出産の自由~|弁護士のつぶやき|大分県中津市弁護士中山知康



男性である私が表題のようなタイトルでブログを書くのは、いささか不適格かもしれませんが、中国の一人っ子政策廃止との報を受けて、少し思うところがありましたので、以下に思ったまま書き留めます。

ご存知のように、中国では長年一人っ子政策と呼ばれるものが支配し、これまでさまざまな弊害が、日本でも、中国の社会問題という形で報道されてきました。指摘されてきた弊害についてはここでは触れませんが(インターネット等で検索すれば、かなりの量の記事や文献が見つかります。)、法律家の観点から見たとき、一番の問題点は、女性の産む・産まないという人権が侵されているということだと思います(なお、女性だけでなく、そのパートナーである男性の人権も被害に遭っているとは言えますが、直接の被害者はやっぱり女性でしょう。)。

今般、中国ではこの一人っ子政策を改めるということで、そのこと自体はよかったと思ったのですが、聞いてびっくりなのは、「2人目の子どもを認める」という点です。

冒頭にも書いたように、産む・産まないは個人の自由であり、女性の人権です。日本国憲法上明記されていなくても、13条の個人の尊厳に当然含まれています。このことは、先進諸国の共通認識と言ってももいいと思いますし、きちんとした人権観念・人権感覚を持った国や地域なら、むしろ、言うまでもない、当然のことだと思います。

ですから、国が1人しか産んじゃダメとか、2人までならいいよなどと言う、その感覚にびっくりなのです。

中国の人権保障状況については、天安門事件などを持ち出さなくても、現在でも欧米各国から懸念が表明されており、まだまだ個人の自由や権利が十全に保証されているとは言い難い状況だと思いますが、今回の一人っ子政策廃止、2人目まで生んでもいいよという報道は、まさにその一例だと感じたのです。

しかし、この問題に関しては、つい20年前まで、日本でも無意識・無自覚に行われてきた、非人道的とも悪魔的とも言っていいほどの甚だしい人権侵害の実例があります。

ハンセン病隔離・絶滅政策がそれであり、患者・元患者たちの強制収容施設であるハンセン病療養所で、ハンセン病患者の絶滅のためと称して長らく行われてきた断種と強制堕胎がそれです。

ハンセン病は、もともと感染力が弱く、しかも、1950年代には既に特効薬が開発されていたものですが、ハンセン病違憲国賠訴訟での勝訴判決などを経て1996年になってようやく「らい予防法」が廃止されるまで、国が、悪魔的と言えるほどの数々の人権侵害を行ってきたのです。前述の断種と強制堕胎は、ハンセン病に罹患した人の結婚の条件であり、1990年代まで続けられたのです(なお、ハンセン病患者や元患者たちがどのような目に遭い、現在でもどのような状況に置かれているかについては、ハンセン病国賠訴訟弁護団のホームページを参照していただければと思います。)。

このように、この日本でも、つい最近まで、「子孫を根絶やしにする」という目的で、国が個人に断種や堕胎を強制してきたというあまりにひどい事実を、あまりに多くの人が無関心で知らなさすぎるのではないかと思っています。

人権侵害をなくすためには、そして、自分の人権を守ると同時に、自らが他人の人権を侵さないようにするためには、こうした人権侵害の歴史、つまり、いつ、何のために、誰が、どのような人権侵害をしてきたのか、そして、その侵害された人たちがどのような目に遭ったかを知り、想像し続けることがとても大切ではないかと思うのです。

(2015.10.30)