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No. 18~TPPと国土の保全~|弁護士のつぶやき|大分県中津市弁護士中山知康

1 TPP交渉が概ね合意に達したとの報道がなされています。

TPPというのは、環太平洋戦略的経済連携協定の英語表記の頭文字を取った略称のことですが、簡単に言うと、加盟国間の関税を撤廃し、その他施策と相まって、自由な貿易の実現を目指すという構想です。

このTPP交渉、概ね合意に達したとの報道がなされていると冒頭に書きましたが、当然ながら条約ですから、参加各国の国内法手続、即ち、批准と国内法の整備が必要であり、まだまだ予断を許さない状況のようです。現に、日本でも、野党は次期国会で政府を追及する姿勢のようですし、貿易自由化を一番求めているように思われる、また、TPPによって一番恩恵を受けるのではないかなどとも素人ながらに思ってしまうアメリカ合衆国でも、次期大統領候補と目される方たちが慎重姿勢、というよりも反対の立場を表明しているようです。

2 経済・貿易の自由化は、今まさに進展している経済のグローバリゼーションの流れに沿うものですから、特に、輸出関連にウェイトを置く国内産業界やそうした企業を傘下に納める経済団体などからすれば、一日も早く貿易の障壁となる関税その他制度の改廃を求めるというのは当然の流れなのだろうと思います。

他方で、貿易自由化に伴って疲弊する、場合によっては産業そのものの存立にとって危機となるかもしれない国内農業界にとっては、まさに深刻な死活問題と捉えられているのも当然でしょう。かといって、TPPに加盟した後は、非関税障壁と指摘されるような、うかつな保護政策は取れないという点も、懸念事項の一つです。

結局のところ、この問題は、かなり低い水準にある日本の食料自給率に照らせば、今後の日本における安定的な食料供給をどのように構築し、維持していくべきかというかなり大きな政策課題であり、換言すれば、国民生活に必須の食料供給という安全保障の問題の一つとも言えると思います。

そういう意味では、TPPを推進するか否かに関わらず、国内の食料供給体制を今後どのように構築・維持していくかを、現時点で真剣に考えておく必要があるのではないでしょうか。

それゆえ、大変難しい問題ではありますけれども、政治家や官僚、あるいは産業界の人たちだけに任せるのではなく、もっともっと国民的議論が必要なのだと思います。

3 さらに言うと、私は、TPPに関連して注目を浴びている国内農業政策に関しては、単なる自国の農業保護とか食料自給率の問題だけではなく、日本の国土保全という、まさに安全保障上の問題も関係しているのではないかと思っています。

というのは、貿易自由化に伴って、日本の農業の構造改革を進め、農業基盤を強化するとしても、基本的にはそれは平地におけるものに限られてくるはずだからです。農業の大規模化といっても、それを山間部や棚田で展開することは、経済効率から言って、なかなか難しいのではないでしょうか。

その結果として、山間部における農業は自ずから衰退していく、当然ながら、限界集落とされる地域はいずれ消滅し、人口も平地に集中する、山間部の農地は耕作放棄地として荒れ、また、林業についても後継者不足に加えて林業だけでは生計が成り立たないため、山林も放置され、荒れ放題となる。

実はこれは、TPPに関わらず、今現実に進行している事象ではあるのですが、貿易自由化と経済効率優先によって、今後ますます日本の山間地域は置き去りにされるでしょうから、このままでは、日本の国土の約7割にも上ると言われる森林とその周辺の地域はいずれ誰も手入れをしない荒れ地となって、地崩れなどの災害をもたらす要因となるだけでなく、水資源など多岐にわたって、外敵によらざる日本の安全保障上の懸念事項となる気がしてならないのです。

山も森林も、山間部の農地も、川も、海も、全て日本を取り巻く環境の一つであり、日本の国土を構成する不可欠な自然です。そして、これらは相互に連関しています。

現に、各地の漁師さんたちが、海洋資源の保全のために、山で植林などの活動を展開しているではありませんか。

こうした観点からは、今回のTPP問題を一つの契機と捉えて、日本を守るために、外敵を想定するだけでなく、国土の保全に真剣に取りくむべき時期が来ているという気がしてならないのです。

(2015.10.15)